安田智恵/作業療法士
ボランティアという概念

日本の認知症専門病棟で作業療法士として働いていた私は、ルーチン化していた業務に違和感を感じ、少し広い視野でニュートラルに物事を見て見たいと思いました。アメリカの医療・福祉は日本とどのように違うのか。少しでも自分の視野を広げられたらという気持ちでボランティアに参加しました。

言語の壁

利用者さんとのコミュニケーションを図る上でネックになったのが言語の壁。私は全くといっていいほど英語が話せませんでした。もちろん半数以上の利用者さんは日本語を話しましたが、中には英語が中心の方もいましたので、私は英語を勉強しようと決心しました。言葉は相手を知ることのできる大切なツールですよね。英語を勉強していく中で、認知症を呈して認知機能が低下しうまく言葉で相手に伝えることが難しい利用者さんの気持ちが肌で理解できるようになりました。だって伝えたいのに伝え方がわからないんですもの!!利用者さんは常に伝わらないもどかしさを感じながら生活しているんだろうなぁと感じました。その反面私は、非言語コミュニケーションの重要性も肌で感じることができました。ジェスチャー、声のトーン、声の抑揚、表情などから相手の気持ちを読み取る事の重要性を学びました。

利用者さんは主体のケア

今高齢者のケアに欠かせないパーソンセンタードケア。梅野木のケアは、本当に利用者さん主体で行われているなぁと思いました。少人数の施設だからできるのではなく、スタッフ一人一人の利用者さんに対する理解したいという思いや気持ちがあるからこそできるケア。利用者さんの意向に沿ったケアができるというのはとても大変な事だと思います。そこを試行錯誤しながら進んでいる様子が伺えました。また、アメリカならではの行事にも力をいれて行っていました。ハロウィーン、サンクスギビング、クリスマス。これらの行事に一緒に参加できたことは一生の思い出になりました。何より利用者さんの表情もいきいきしていました。こういった行事もアクティビティとして行うことで利用者さんに良い効果があり、さらには利用者さんのご家族との絆や関係性も構築されるのだろうと思いました。日本にももちろん行事はありますが、「家族揃って楽しむ」という文化や習慣は根付いてはいないと思います。アメリカのに来て、家族との結びつきを強く感じました。

梅野木のボランティアを通して学んだこと

日本ではないアメリカでボランティアをさせてもらうことで、沢山の違和感を感じました。でも違和感を感じるって、良いことだなぁと思います。違和感を感じないで生活するほうがずっと危険だと思うからです。自分が物事を見る上で通しているフィルターの小ささを痛感しました。世界は本当に広いんだなぁと。自分のフィルターが広がった気がします。梅野木のスタッフには大変お世話になりました。ボスの図らいでアメリカの作業療法士の方とお話する機会も戴けました。感謝の気持ちで一杯の3ヶ月でした。ボランティアをするにあたり、精神的にも肉体的にもゆとりが必要だと思いました。そして何より自分が楽しむ事。これが一番大事だと思いました。貴重な貴重な体験が出来たことに、心から感謝します。本当にありがとうございました。お世話になりました!